物価高の今こそ知りたい——定期的な歯のメンテナンスで、年間医療費が変わる話
歯科アイノ 副院長・歯周病専門医 相野 誠
「歯医者は痛くなってから行くもの」は、損をしている
「歯が痛くなってから歯医者に行く」——そう思っている方は、少なくないと思います。
食費・光熱費・日用品と、あらゆるものの値段が上がり続けている今、「出費を少しでも減らしたい」と感じている方も多いのではないでしょうか。実は、毎日の歯のケアと定期的な歯科メンテナンスが、その答えになるかもしれません。
香川県歯科医師会が20年近くにわたって県民を対象に行ってきた大規模調査では、歯の健康状態の違いが年間の総医療費に大きな差をもたらす傾向があることが、統計的に示されています。
今回は、その調査結果をもとに、「定期的な歯科メンテナンスが、全身の健康と医療費にどれほど影響するか」をお伝えします。
香川県の大規模調査が示した数字
公益社団法人 香川県歯科医師会は、平成17年から現在まで20年近くにわたって、県内の国民健康保険・後期高齢者医療制度加入者を対象に、歯の健康と医療費・全身疾患の関係を調べ続けています。
令和5年に公表された最新報告書では、医科診療費・歯科診療費・調剤費を合計した年間総医療費について、次のことが示されています。
- 歯が20本以上ある人は、そうでない人と比べて年間医療費が中央値で約10万円低い傾向がある
- 歯周病が軽度な人は、重度な人と比べて年間医療費が中央値で約5万円低い傾向がある
- 定期的に歯科健診を受けている人は、受けていない人と比べて年間医療費が中央値で約4万円低い傾向がある
いずれも統計的に有意な差(p値0.05未満)が確認されており、「たまたま」ではない結果です。
この「総医療費」は歯科だけの話ではありません。内科・整形外科などの医科診療費と調剤費まで含めた合計です。歯を守ることが、全身の医療費にも影響している可能性を示すデータといえます。
※数値は香川県歯科医師会公式サイト「歯の健康と医療費に関する実態調査」ページに掲載されている調査結果の説明に基づきます。調査対象は香川県内の加入者であり、すべての方に同様の結果が当てはまることを保証するものではありません。
なぜ、歯の健康が全身の医療費に影響するのか
① 歯周病は全身疾患のリスクを高める
歯周病は「口の中だけの病気」ではありません。歯周病菌が血流に乗って全身に広がることで、糖尿病・心疾患・誤嚥性肺炎・慢性腎臓病・アルツハイマー病などのリスクが高まることが、多くの研究で報告されています。
香川県歯科医師会の調査でも、歯が多く歯周病が軽い人ほど、調査後6年間のアルツハイマー病・誤嚥性肺炎・慢性腎臓病の発症率が統計的に有意に低いという結果が出ています。
発症率が下がれば、それに伴う通院・投薬・入院費も減る傾向があります。これが医療費の差につながっていると考えられています。
② 噛む力が落ちると、医療費が増える
同調査(令和2年度)では、噛む力(咀嚼能力)と医療費の関係も分析されています。
「何でもかんで食べられる」人と「ほとんど噛めない」人を比べると、医科診療日数・医科診療費ともに、噛めない人ほど有意に高いという結果が出ています。
よく噛んで食べることは、消化吸収・脳への刺激・誤嚥防止など、全身の機能維持に大きく関わっています。歯を守ることは、噛む力を守ることでもあります。
③ 毎日のセルフケアが医療費を変える
歯間ブラシやデンタルフロスで歯と歯のすき間をケアしている人は、していない人に比べて医科診療費が低いというデータもあります(令和3年度調査)。
毎日2〜3分のケアが、数年後の医療費に影響している可能性があります。
定期メンテナンスは「コスト」ではなく「投資」
「定期健診に行くとお金がかかる」と感じる方もいますよね。でも、数字で考えてみましょう。
- 歯科の定期健診(3〜4ヶ月に1回):保険診療で1回あたり約1,500〜3,000円程度
- 年間4回通っても:約6,000〜12,000円
一方、調査データでは、定期的に歯科健診を受けている人はそうでない人と比べて、年間の総医療費が約4万円低い傾向が示されています。あくまで調査データの傾向に基づくものですが、定期健診にかかる費用を考えると、長い目で見てコストを抑えられる可能性があります。
さらに、歯を失った場合の補綴治療(インプラント・ブリッジ・部分入れ歯)には数万〜数十万円がかかります。歯が残っていれば、この費用も不要です。「定期的に歯科に通う習慣」は、長い目で見れば賢明な選択といえるでしょう。
健康寿命への影響も見逃せない
同調査では、医療費だけでなく介護・寿命との関係も明らかになっています。
- 歯が20本以上ある人は、介護認定者の割合が約12ポイント低い
- 歯周病が軽度な人は、介護認定者の割合が約5ポイント低い
- 歯の本数が多いほど死亡率が低く、20本以上ある人の死亡率は0〜4本の人の約半分
- 8020(80歳で20本以上の歯を持つ)を達成した人は、介護サービス利用率・死亡率ともに低い
お金だけの話ではなく、自分の足で歩き、自分の歯で食べ続けられる時間の長さにも、歯の健康は直結しています。
こうしたデータを踏まえ、当院では治療後の患者さんに対して、定期的なメンテナンスを特に重視しています。
歯科アイノのメンテナンス(SPT)について
当院では、歯周病治療後の患者さんに対して、**SPT(サポーティブ・ペリオドンタル・セラピー)**と呼ばれる定期的なメンテナンスを行っています。
単に「歯石を取るだけ」ではなく、
- 歯周ポケットの状態確認
- プロフェッショナルクリーニング
- セルフケアの指導・修正
- 必要に応じた再治療の判断
を継続的に行うことで、治療後の状態を長期的に維持することを目標としています。
歯周病は「治って終わり」の病気ではありません。定期的なメンテナンスを続けることが、歯を長く守る唯一の方法です。
まとめ
- 歯が20本以上ある人は、そうでない人より年間医療費が中央値で約10万円低い傾向がある
- 定期的に歯科健診を受けている人は、年間医療費が約4万円低く、介護認定率も低い傾向がある
- 歯周病が全身疾患(糖尿病・肺炎・腎臓病・認知症)の発症リスクと関係している
- 介護リスク・死亡率にも、歯の健康は明確に影響している
「痛くなってから行く」から「定期的に通う」へ。その小さな習慣の変化が、何年後かの健康と家計を、大きく変えるかもしれません。
※本記事は、香川県歯科医師会公式サイト「歯の健康と医療費に関する実態調査」ページに掲載されている調査説明をもとに作成しています。掲載データはあくまで統計的な傾向を示すものであり、個々の方の医療費や健康状態を保証するものではありません。詳細は香川県歯科医師会公式サイトをご参照ください。
【歯科アイノ】
名古屋市昭和区 / 歯周病専門医・歯学博士在籍 定期メンテナンス(SPT)のご予約はお気軽にご相談ください。
